自家用操縦士への道 PartV(1981年8月16日〜29日の訓練記)

 今、思えば、期待と不安を胸に抱いて渡米し、なんとか自家用操縦士の免許を取得することができました。そのトレーニング記録を公開します。
 当時のフライトログブックを見ながら思い出して綴る訓練日記で、自家用操縦士を目指す方の参考になればと思います。

 日本を出発したのは1981年7月10日で、帰国は8月29日でした。訓練は7月13日から行い、7月29日にソロフライト成功、8月23日に実技試験合格しました。途中、航空身体検査やFAAの事務所で学科試験も受けました。

 下記のカレンダーのアンダーライン部をクリックすると、その日の訓練内容などがご覧いただけます。[ ]内ですが、[DEP]は日本出発、[ARR]は日本帰国、[数字]は訓練累計日数、[休]は訓練休み、[慣]は慣熟飛行、[遊]は遊覧飛行を表わしています。
 7月の訓練記はこちらから。8月1日から15日の訓練記はこちらから

1981年7月
SunMonTueWedThuFriSat
   
10[DEP]11[休]
12[休]13[1]14[2]15[3]16[休]17[休]18[4]
19[5]20[6]21[7]22[休]23[8]24[9]25[10]
26[休]27[11]28[12]29[13]30[休]31[14] 
1981年8月
SunMonTueWedThuFriSat
      1[15]
2[16]3[休]4[17]5[18]6[19]7[休]8[20]
9[21]10[22]11[23]12[24]13[25]14[休]15[26]
16[27]17[休]18[28]19[29]20[30]21[31]22[32]
23[33]24[休]25[慣]26[休]27[遊]28[休]29[ARR]

トレーニング27日目(1981/8/16 Sun 12:00〜18:20[途中の空港で計38分休憩])


・訓練機 ⇒Cessna150(N704TH)
・飛行時間⇒5時間42分/累計飛行時間52時間18分
・単独飛行時間⇒5時間42分/累計単独飛行時間16時間48分
・着陸回数⇒5回/累計着陸回数129回
・出 発 地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・目 的 地 ⇒OROVILLE(オロビル空港)⇒MADERA(マデラ空港)
・最終到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒ロングクロスカントリー、VORナビゲーション、タッチアンドゴー
・飛行距離⇒全行程493statute mile(約794km)
・巡航高度⇒5500feet(約1700m)〜7500feet(約2300m)
・対気速度⇒100MPH(約160km)














 今日、未明に夜間飛行を終えて就寝し、昼から長距離の野外飛行です。正午に出発し、飛行時間は5時間42分、途中の空港での休憩を入れて、午後6時20分にヘイワード空港へ戻ってきました。

 飛行経路は、ヘイワード空港離陸後、北東方向へ飛行し、オロビル空港でタッチアンドゴーをしてフルストップ着陸。オロビル空港離陸後、南東方向へかい、一路マデラ空港へ。マデラ空港で給油して、北西に飛んで、ストックトン空港上空で機首を西方向へ変えて、ヘイワード空港へ帰還します。

 飛行経路の番号説明
  1 Hayward Airport(1→2までの距離45mile)
  2 Travis Air Force Base(2→3までの距離20mile)
  3 University Airport(3→4までの距離39mile)
  4 Williams VOR(4→5までの距離37mile)
  5 Oroville Airport(5→6までの距離71mile)
  6 Hangtown VOR(6→7までの距離47mile)
  7 Linden VOR(7→8までの距離52mile)
  8 Over obstructions(8→9までの距離42mile)
  9 Madera Airport(9→10までの距離89mile)
  10 Stockton Airport(10→1までの距離51mile)

 全行程の距離は493mile(約794km)。最も長い距離は、オロビル空港からマデラ空港までの212mile(約341km)の2時間36分の飛行です。

 ヘイワード空港を離陸して、7500フィートまで高度を上げ、3のユニバーシティ空港上空で機首を変え、高度を6500フィートに下げて、4のWilliams VORを目指します。VOR上空で、機首を5のオロビル空港へ向けて飛行し、着陸します。
 オロビル空港でちょっと休憩し、再度、離陸。高度5500フィートで飛行し、6のHangtown VOR、7のLinden VORを経由して、9のマデラ空港まで飛行します。
 マデラ空港で給油して、再度離陸し、6500フィートまで高度を上げて、ストックトン空港を目指し、そこで針路を西に向けて、ベースのヘイワード空港へ帰還です。

 オロビル空港は管制塔がありませんので、Oroville Unicomの122.8Mhzにあわせて、自分の位置や着陸など自分の意志を告げながら、アプローチして着陸します。ここで、また、軽飛行機とニアミスしました。当方は、Left Trafficで、無線で位置などを告げながらアプローチしましたが、危うくStraight Entryしてくる軽飛行機とぶつかりそうになりました。向こうは、無線で位置を告げずに進入してきたようです。相手機に乗っている人の顔が見えましたから、本当に危なかったです。

 オロビル空港からマデラ空港までの飛行は、アメリカで飛行した経路のうち、最も長距離の飛行でした。3時間近くも飛んでいるとさすがに、ちょっと疲れますが、やはり飛ぶのは楽しいですね。
 ちなみに、広島西飛行場から大阪・八尾空港までは直線で180mileです。福岡空港から大阪までが直線で、300mileですから、今日飛んだ493mileは、福岡空港離陸後、大阪・八尾空港へ飛んで、広島西飛行場に帰還した場合とほぼ同じ距離です。

 昨日と今日で10時間近く飛行しました。単独飛行時間ももうすぐ20時間になります。明日は休みですが、ロングクロスカントリーが終わりましたので、今週は飛行技術の基礎をしっかり再確認し、来たる実技試験を目指します。
飛行経路
 
空港の給油所
(給油車で飛行機に給油)
 
クロスカントリー中の景色
 
マデラ空港


休日(1981/8/17 Mon)


 今日は休日です。次節の訓練は、実技試験に向けて飛行技術の再点検です。
 実技試験を受けるには、法定上、総飛行時間40時間以上、そのうち単独飛行時間が20時間以上必要です。アメリカの場合、総飛行時間は大体60時間くらいが目安です。日本で自家用免許を取得する場合、大体120〜150時間ぐらい必要と聞きます。アメリカの場合は、飛行機のリース料は燃料込みで、その当時1時間1万円で、十分おつりがきました。日本の場合、昔は燃料込みで1時間3〜4万円でしたが、2004年現在、燃料込みで1時間約5万円(教官同乗)で、絶句する値段です。
 さて、リース料ですが、アメリカの場合、燃料は別途となり、満タン返しとなります。(自分で給油の際に燃料代を払います。)日本の場合は、燃料代込みのリース料になっています。
 それから、飛行時間(=リース時間)はエンジンが動いている時間となります。エンジンのタコメーターに目盛り(時間表示は小数点第1位の表示なので、リース時間は6分単位)があり、そこで、エンジンの回転時間を調べます。ですから、厳密に言えば、地上滑走の時間も飛行時間の一部となります。空中を飛んでいる本当の飛行時間はもう少し少ないんです。
 空から見るアメリカの景色も見慣れてきました。左の写真は、んー、どこだろう、クロスカントリーで飛行した際に、着陸前の市街地を撮影しました。左手に操縦桿、右手にカメラ、かなりの余裕(?)です。
多分、モデスト空港周辺の市街地


トレーニング28日目(1981/8/18 Tue 12:00〜14:00)


・訓練機 ⇒Cessna150(N66592)
・飛行時間⇒2時間/累計飛行時間54時間18分
・単独飛行時間⇒0時間/累計単独飛行時間16時間48分
・着陸回数⇒7回/累計着陸回数138回
・出発地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒失速、低速飛行、急旋回、離着陸訓練(Short field & Soft field)、タッチアンドゴー









 今週は、実技試験に向けて操縦技術の仕上げと確認の日々が続きます。今日は教官同乗で、基礎訓練をみっちり行います。
 ヘイワード空港を離陸後、基礎的な操縦技術のほとんどのメニューのエアワークをこなし、ヘイワード空港でタッチアンドゴーです。かなり、中身のある訓練でした。
 クロスカントリーにソロで出て、着陸時に機首が上がるくせがついて、早めに失速警報が鳴るようになってしまいました。これは、まずいというのが自分でもわかります。早く直さないと次週は実技試験です、アメリカ滞在の日数も残り少ないので、1日1日が勝負です。
周りを確認して、こんなところでエアワーク


トレーニング29日目(1981/8/19 Wed 12:00〜13:30)


・訓練機 ⇒Cessna150(N704TH)
・飛行時間⇒1時間30分/累計飛行時間55時間48分
・単独飛行時間⇒1時間30分/累計単独飛行時間18時間18分
・着陸回数⇒8回/累計着陸回数146回
・出 発 地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・目 的 地 ⇒LVK(リバモア空港)
・最終到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒失速、低速飛行、タッチアンドゴー(Soft field)











 今日は、単独飛行で、基礎訓練を自分が納得できるまで行います。
 ヘイワード空港を離陸後、一通りのエアワークをこなし、私のタッチアンドゴー練習のベース空港ともいえるリバモア空港で7回のタッチアンドゴーを行いました。
 タッチアンドゴーは、不整地離着陸を繰り返し行い、操縦技術を自分で確認しました。

 さあ、実技試験の日程が次の日曜日の23日に決まりました。試験場所は、ヘイワード空港のサンフランシスコ湾対岸、サンカルロス空港です。明日は、教官同乗で実技試験を想定し、サンカルロス空港へ行きます。
野外飛行でのワンショット


トレーニング30日目(1981/8/20 Thu 12:30〜14:36)


・訓練機 ⇒Cessna150(N66592)
・飛行時間⇒2時間6分/累計飛行時間57時間54分
・単独飛行時間⇒0時間/累計単独飛行時間18時間18分
・着陸回数⇒9回/累計着陸回数155回
・出 発 地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・目 的 地 ⇒San Carlos Airport(サンカルロス空港)⇒FMT(フリモント空港)
・最終到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒失速、低速飛行、タッチアンドゴー(Soft field)











 今日は、教官と同乗で3日後の実技試験の空港であるサンカルロス空港へ飛びます。
 左の写真は、サンカルロス空港の位置を示しています。SFCはサンフランシスコ国際空港、1はヘイワード空港、2がサンカルロス空港、3がフリモント空港です。
 実技試験では、滑走路が短く、幅の狭いフリモント空港が使用されることを予想し、サンカルロス空港で1回タッチアンドゴーをした後、フリモント空港で7回、タッチアンドゴー(Soft field)を行いました。
 私は、短距離離着陸(Short field)よりも不整地離着陸(Soft field)の方が苦手なので、その操縦技術を何回も繰り返します。さすがに7回タッチアンドーすると疲れます。1回のタッチアンドゴーは、5〜6分かかるので、7回となると40分間、タッチアンドゴーです。

 明日、あさっても、実技試験に向けた最終仕上げです。
サンカルロス空港の位置


トレーニング31日目(1981/8/21 Fri 1回目13:30〜14:42、2回目15:00〜16:48)


・訓練機 ⇒Cessna150(N66592)
・飛行時間⇒3時間/累計飛行時間60時間54分
・単独飛行時間⇒1時間12分/累計単独飛行時間19時間30分
・着陸回数⇒16回/累計着陸回数171回
・出 発 地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・目 的 地 ⇒LVK(リバモア空港)[ただし、本日1回目のフライトのみ]
・最終到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒タッチアンドゴー(Soft field)、フードワーク











 今日と明日は、実技試験に向けた最後の調整です。今日は、まず、ソロでリバモア空港でタッチアンドゴーを行い、ヘイワード空港に戻って、いつも教えてくれた教官の最終チェックです。約1か月半の訓練の成果を教官にチェックしてもらいます。

 まだ、単独飛行時間が20時間に満たないため、まず、最初にソロでヘイワード空港を飛び立ち、リバモア空港へ行ってタッチアンドゴーを行います。不得意な不整地離着陸(Soft field take-off & landing)を7回繰り返し、ヘイワード空港へ帰還しました。
 それから、今度は教官同乗でヘイワード空港を飛び立ち、フードワーク(帽子のようなものをかぶって、計器だけしか見えない状態で飛行)を18分間訓練し、ヘイワード空港に戻って、8回の不整地離着陸を行いました。今日1日の着陸回数は15回で、1日あたりの回数としては最高でした。ふーっ。

 教官の最終チェックを受けた結果、「実技試験の受験、OK!」でした。さあ、明日は、ソロでの最終調整ともう一人の教官の最終チェックです。
この空で、操縦技術の最終チェック


トレーニング32日目(1981/8/22 Sat 1回目12:00〜13:36、2回目17:00〜18:12)


・訓練機 ⇒Cessna150(N66592)
・飛行時間⇒2時間48分/累計飛行時間63時間42分
・単独飛行時間⇒1時間36分/累計単独飛行時間21時間6分
・着陸回数⇒10回/累計着陸回数181回
・出 発 地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・目 的 地 ⇒FMT(フリモント空港)[ただし、本日1回目のフライトのみ]
・最終到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒低速飛行、タッチアンドゴー(Short field &Soft field)、急旋回











 今日は訓練最終日、いよいよ、明日が実技試験です。昨日の時点で単独飛行時間が20時間に満たないため、今日は、昼いち、ソロでフリモント空港へ飛んでタッチアンドゴーを行い、ヘイワード空港に戻ります。夕方、もう一人の教官による最終チェックです。もう、訓練は今日1日しかありません。

 まず、ソロでヘイワード空港を飛び立ち、フリモント空港でタッチアンドゴーを5回行いました。不得意な不整地離着陸(Soft field take-off & landing)もなんとかさまになってきました。その後、ヘイワード空港へ戻ったこのフライトで、なんとか単独飛行時間20時間を超えました。
 それから、今度は昨日とは別の教官が同乗して、最終チェック。低速飛行やタッチアンドゴーをこなし、明日の実技試験に向けて、なんとか「ゴー」がでました。

 いよりよ、明日は実技試験。ヘイワード空港のサンフランシスコ湾対岸のサンカルロス空港へ飛んで、口頭試験と操縦技術の試験を受けます。
今日で訓練は終了


祝 自家用操縦士免許取得:トレーニング33日目[実技試験]
(1981/8/23 Sun 受験地へ11:40〜12:04、受験13:30〜14:42、帰還15:00〜15:24)


・訓練機 ⇒Cessna150(N66592)[ヘイワード空港への帰還はCessna150(N704TH)]
・飛行時間⇒2時間/累計飛行時間65時間42分
・単独飛行時間⇒2時間/累計単独飛行時間23時間6分
・機長飛行時間⇒24分/累計機長飛行時間24分
・着陸回数⇒4回/累計着陸回数185回
・出発地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・目的地 ⇒San Carlos Airport(サンカルロス空港)
 ⇒FMT(フリモント空港)⇒San Carlos Airport(サンカルロス空港)
・到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・試験内容⇒口頭試験、実技試験(失速、低速飛行、不時着、短距離着陸など)













 
サンカルロス空港周辺の位置関係 サンカルロス空港のエプロン

 今日は、いよいよ実技試験。ヘイワード空港を離陸し、緊張しながら、一路、試験官の待つサンカルロス空港へ。さあ、いよいよ本番です。
 当日の飛行経路ですが、1がヘイワード空港、2が受験地のサンカルロス空港、試験官を乗せて、3のフリモント空港へ行き、再度サンカルロス空港へ戻り、試験結果を待ちました。結果は見事、合格。そして、ヘイワード空港へ帰還しました。(SFCはサンフランシスコ国際空港)

 それでは、詳しく試験当日の様子を。
 試験は、まず口答試験から。当然ですが、試験官が英語で自家用操縦士として飛ぶために必要な事項について、口頭で質問します。こちらは、緊張しながら英語で回答します。訓練記を書いている2004年現在、あれから20年以上経過していますので、聞かれた具体的な内容は記憶してませんが、基本的な項目だったように思います。口答試験も無事終えて、いよいよフライトです。

 実技試験は、自家用操縦士として安全に飛行できるかという観点で試験官が試験します。飛行前の外部点検から試験ははじまり、ひととおり終えて、コクピットへ。エンジンをかけて、タキシングし、離陸します。かなり緊張しましたが、離陸後、失速からの回復、低速飛行などの基本的操作の試験を行い、いざ、フリモント空港へ。

 フリモント空港へは、短距離着陸。着陸後、タクシーウェイに出て、再度離陸。ここで、大変な勘違いがあり、「ああっー、だめだ、落ちる。」と思いました。
 試験官が離陸後に45度bankで出よと言うのです。バンクは傾きですから、急旋回と同じ角度です。それを離陸直後の機体の不安定な時点ですると、非常に危険です。私は、何回も45度バンクというのを手振りを交えながら確認するのですが、試験官は「そうだ」というのです。
 やむ得ず、離陸後、しばらくして45度の急旋回に入りかけ、30度を超えるあたりで、試験官がとっさに操縦かんをとりました。この瞬間、「ああっー、だめだ」と思いました。あとから思えば、滑走路延長線から45度角度で出発せよという意味だったのだとわかりますが、それなら、degreeというべきだよなと思いました。
 しかし、まだ試験は続いています。次に、緊急事態を想定した不時着です。上空からどこに着陸するか決めて、エンジンをアイドル状態にして高度を落とします。それから、360度旋回や急旋回などの試験メニューをこなし、サンカルロス空港へ帰りました。

 ついに試験が終わりました。だめだろうなと思いながら、待合室で結果を待ちました。試験官がやってきました。

 開口一番、「Congratulations!」、そうです、合格したのです。本当に胸が張り裂けるぐらいうれしかった。試験官は、すぐに「Temporary Airman Certificate」をくれました。このあたりが日本と違うところです。正式な免許証は後日郵送されますが、それまでの免許として一時的な免許(大きさ14cm×10cmの紙切れ1枚)をくれるのです。しっかりと試験官と握手を交わしました。

 さあ、ヘイワード空港へ帰りましょう。帰りの飛行機の機体番号はN704THです。試験を受けた機体であるN66592は、同じ訓練を受けてきた大学の先輩が受験に使うので、機体を変えて帰還です。

 帰りの飛行機の中は、まさに興奮状態で、思わず、する必要のない失速回復訓練をしてしまいました。パイロットライセンスを取ったという満足感、夢を実現したという達成感のせいか、「I got a license.」と雄叫びをあげ続けながら飛行しました。
 ヘイワード空港に着いてからは、勢いあまって、Beechcraft社の営業所でBeechcraft社のピンバッジを購入し、窓口の女性に「Today,I've got a license.」と告げてしまいました。窓口の女性には「Congratulations!」と言っていただき、まさにその日は興奮冷めやらぬという感じでした。
 同じ日に受験した大学の先輩も見事取得され、ダブル合格で有終の美を飾りました。

 そうそう、大事なことを紹介するのを忘れていました。サンカルロス空港からヘイワード空港へ飛行した、雄叫びの24分間は、私が初めてPIC(Pilot In Command)、すなわち機長として飛行したフライトです。Flight Log Book(飛行記録)の欄に、PICの欄があるのですが、初めてその欄に飛行時間を書き込みました。それ以降は、慣熟飛行であってもPICです。夢のようです。

やったー!、ライセンス、取ったどー

当日、試験官がくれたTemporary Airman Certificate
(かなり、ぼろぼろ。単三電池で紙の大きさを示しています)


休日(1981/8/24 Mon)


 1週間ぶりの休日です。まだ、昨日の免許取得の余韻が残っています。
 今日は、日中、のんびり過ごしました。夜は、教わった二人の教官に近くのレストランで夕食をおごります。1か月半、大変お世話になったお礼です。

 今週末にはもう日本へ帰ります。一発合格したからよかったものの、もし試験に落ちていたらバタバタでした。
 またアメリカに来たいですが、いつ来れるかわからないので、記念にサンフランシスコ遊覧飛行を計画することにしました。訓練所の機体のチャーター料が割高なので、ヘイワード空港内のクラブ「The Flying Club」の機体をリースすることにし、明日はCessna152(Cessna150よりも10馬力アップの110馬力エンジン搭載)で慣熟飛行です。ちなみに当時のレート(1ドル230円)で、Cessna152のチャーター料は1時間16ドル=約3700円(燃料代別)でした。日本では考えられないくらい安い!!
今日は、朝寝坊


慣熟飛行(1981/8/25 Tue 15:00〜16:12)


・使用機 ⇒Cessna152(N49430)
・飛行時間⇒1時間12分/累計飛行時間66時間54分
・機長飛行時間⇒1時間12分/累計機長飛行時間1時間36分
・着陸回数⇒5回/累計着陸回数190回
・出発地 ⇒HWD(ヘイワード空港)⇒LVK(リバモア空港)
・到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・飛行内容⇒慣熟飛行、失速、低速飛行、短距離着陸、ベースエントリー










 今日は、2日後のサンフランシスコ湾周辺の遊覧飛行のためのCessna152の慣熟飛行です。お世話になった教官に同乗してもらい、Cessna150(100馬力)よりも10馬力強いCessna152をチャーターしました。

 離陸速度などの飛行性能がCessna150と少し違います。失速や低速飛行を繰り返し、リバモア空港で4回タッチアンドゴーを行いました。概ね慣れましたが、10馬力違うのを微妙に体が感じます。
 リバモア空港は、今日が最後です。この空港では、タッチアンドゴーの離着陸訓練や航空管制でとてもお世話になりました。今度はいつ来れるのでしょうか。
 左の写真は、ヘイワード空港Runway28R離陸後、左側の見慣れた景色です。この景色とももうすぐさよなら、なんかとても寂しい気分です。
ヘイワード空港離陸後の見慣れた景色も見納め


休日(1981/8/26 Wed)


 今日は、最寄のHayward駅からBARTに乗って、サンフランシスコ市内へ観光です。思えば、あまり観光はしませんでした。サンフランシスコは3回目。ケーブルカーに乗って、フィッシャーマンズワーフへ。
 もうちょっと滞在したいですが、9月から大学の授業が始まります。あっ、前期試験が9月末からです、大丈夫かな。

 明日は、今回の渡米でのラストフライト。軽飛行機をチャーターし、サンフランシスコ湾周辺の遊覧飛行です。
 左の写真は、今回の訓練で一番お世話になったCessna150(N6566G)ですが、なんと、老朽化により、8月下旬、リタイヤーしてしまいました。
 一番お世話になったN6566G、それとN66592、この両機の機体番号は一生涯忘れないでしょう。ここで改めて、この2機に感謝します。
お世話になったN6566Gをバックに


遊覧飛行(1981/8/27 Thu 11:20〜13:26)


・使用機 ⇒Cessna152(N714YN)
・飛行時間⇒2時間6分/累計飛行時間69時間
・機長飛行時間⇒2時間6分/累計機長飛行時間3時間42分
・着陸回数⇒1回/累計着陸回数191回
・出発地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・飛行内容⇒サンフランシスコ湾周辺の遊覧










 2日後に日本に帰るので、今日が飛行機の乗り納め。最後の記念に、サンフランシスコ湾周辺の遊覧飛行を行いました。
 今日のフライトは、同じくライセンスを取得した大学の先輩と一緒です。機長席には私が座ります。

 飛行経路ですが、1のヘイワード空港離陸後、2、3、4という経路でサンフランシスコ湾を取り巻くように西に向かい、5の金門橋の上空へ。そして、海のほうへ出て、6の北方向へ海岸線沿いに飛んで、Uターンし、飛んできた経路に沿って、ヘイワード空港へ帰還します。

 金門橋の上空遊覧は、とても気持ちがよく、爽快です。金門橋の上を自分の手で飛んでいるという手応えは何にも変えがたいものでした。途中、今回の渡米最後の失速回復訓練もしてしまいました。

 今度はいつ来れるかなと思うと、満足感はあるもののちょっと寂しさも感じます。

 左下の写真のスライドショー(4枚)は、金門橋の旋回です。旋回している気分、味わえますか。(パソコン環境により、スライドショーが見れない場合もあるかもしれません。)
 なお、このサンフランシスコ湾周辺の遊覧飛行は、30枚弱の写真があるため、そのスライドショーを現在作成しています。完成次第、アップする予定ですので、お楽しみに。
飛行経路
 
金門橋を旋回


休日(1981/8/28 Fri)


 思えば、約1年前、空があきらめきれず、大学の航空部でグライダーに乗りはじめました。風を切る音だけが聞こえるグライダーのコクピットはよかったですが、「やはり、軽飛行機を操縦したい。」という気持ちにかられました。バイトなどでお金を工面して渡米し、ついに自家用操縦士のライセンスを取得することができました。夢を持ち続けて本当によかったとつくづく思います。

 明日は日本へ帰るので、今日は身辺整理です。とても、充実し、一生涯忘れられない50日間でした。さて、アメリカに忘れ物はないかな。

  
Cessna150のcockpit  Runway 28R(Hayward Airport) First Solo Flight in Tracy Airport
(1981/7/29)

  
アメリカ大陸の田園地帯 死ぬ思いをした雲 まさにアメリカ大陸


帰国の途へ(1981/8/29 Sat)


・総飛行時間⇒69時間
・機長飛行時間⇒3時間42分
・総着陸回数⇒191回





自家用操縦士免許証  今日、日本に帰国します。自家用操縦士免許、なんとか取得できました。
 左の写真は、自家用操縦士免許です。左側の9.5cm×6cmの紙切れがアメリカのライセンス、右側は冊子タイプの日本のライセンス(自家用操縦士技能証明書)です。
 アメリカのライセンスは、実技試験合格後、数週間してから郵送で送られてきました。でも顔写真もない、まさに紙切れ一枚です。帰国してから、運輸省へ免許の書き換えの申請して発行してもらったのが、右側の日本のライセンスです。中にちゃんと写真が貼ってあって、「陸上単発」の限定事項も記載してあります。ライセンスを手にしたときの満足感は今も忘れられません。
 自家用操縦士を目指している方、がんばってください。夢を持ちつづければ、夢は実現すると思います。

 さて、本日分で、「自家用操縦士への道」の訓練記は終了です。これまで、訓練記をご覧いただき、ありがとうございました。(作成に6か月もかかってしまいました。)

 最後になりましたが、左の写真をクリックしていただきますと、わたくし、Captainheroがごあいさつ申し上げます。今後とも、当サイト「Cockpit」をよろしくお願いします。

 夢は一つ実現しました。でも、夢はまだ続く・・・・。
自家用操縦士免許証
(左:アメリカのライセンス、右:日本のライセンス)


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