自家用操縦士への道 PartU(1981年8月1日〜15日の訓練記)

 今、思えば、期待と不安を胸に抱いて渡米し、なんとか自家用操縦士の免許を取得することができました。そのトレーニング記録を公開します。
 当時のフライトログブックを見ながら思い出して綴る訓練日記で、自家用操縦士を目指す方の参考になればと思います。

 日本を出発したのは1981年7月10日で、帰国は8月29日でした。訓練は7月13日から行い、7月29日にソロフライト成功、8月23日に実技試験合格しました。途中、航空身体検査やFAAの事務所で学科試験も受けました。

 下記のカレンダーのアンダーライン部をクリックすると、その日の訓練内容などがご覧いただけます。[ ]内ですが、[DEP]は日本出発、[ARR]は日本帰国、[数字]は訓練累計日数、[休]は訓練休み、[慣]は慣熟飛行、[遊]は遊覧飛行を表わしています。
 7月の訓練記はこちらから。8月16日から29日の訓練記はこちらから

1981年7月
SunMonTueWedThuFriSat
   
10[DEP]11[休]
12[休]13[1]14[2]15[3]16[休]17[休]18[4]
19[5]20[6]21[7]22[休]23[8]24[9]25[10]
26[休]27[11]28[12]29[13]30[休]31[14] 
1981年8月
SunMonTueWedThuFriSat
      1[15]
2[16]3[休]4[17]5[18]6[19]7[休]8[20]
9[21]10[22]11[23]12[24]13[25]14[休]15[26]
16[27]17[休]18[28]19[29]20[30]21[31]22[32]
23[33]24[休]25[慣]26[休]27[遊]28[休]29[ARR]

トレーニング15日目(1981/8/1 Sat 12:10〜13:40)


・訓練機 ⇒Cessna150(N6566G)
・飛行時間⇒1時間30分/累計飛行時間23時間
・単独飛行時間⇒0分/累計単独飛行時間24分
・着陸回数⇒7回/累計着陸回数70回
・出発地 ⇒HWD(ヘイワード空港)⇒FMT(フリモント空港)
・到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒タッチンドゴー、ノンタワー空港への進入、横風着陸、ストレイトインアプローチ









 訓練の幅が出てきました。ファーストソロも管制塔のない空港(トレーシー空港)でしたが、今日も管制塔のない空港のフリモント空港でタッチアンドゴーです。
 フリモント空港は小さな空港で滑走路の長さは約700m、122.8Mhzに無線をあわせて、空港の半径5マイル(約8km)までに、自分の意思(着陸)、位置を無線に報告しながら、空港へ近づきます。
 今日は横風がありましたので、横風着陸(Cross wind landing)の訓練をしました。まっすぐ滑走路に進入しようとしても、横風があると飛行機が風に流されるので、風上側へ機首を向けます。向ける角度は風速に応じて違いますので、まさに体で覚えないといけません。そして、接地前に機首を滑走路の向きにあわせます。一番難しい技術です。
 ヘイワード空港はフリモント空港の北北西に位置しているため、ヘイワード空港への進入は、Straight in approach でした。
 左の写真は、ヘイワード空港とフリモント空港の位置を示しています。
フリモント空港の位置


トレーニング16日目(1981/8/2 Sun 10:10〜11:28)


・訓練機 ⇒Cessna150(N6566G)
・飛行時間⇒1時間18分/累計飛行時間24時間18分
・単独飛行時間⇒30分/累計単独飛行時間54分
・着陸回数⇒10回/累計着陸回数80回
・出発地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒タッチンドゴー、短距離離陸、短距離着陸









 今日は、ヘイワード空港で、離着陸の練習です。先日のファーストソロに引き続いて、2回目のソロでした。
 着陸を3回行った後、教官が飛行機を降りて、4回ソロで離着陸し、再度、教官が同乗し、3回離着陸(短距離離着陸)を行いました。俗にいう「Traffic」で、ヘイワード空港のRunway 28Rの場周経路を繰り返し飛びました。
 もう少しすると、野外飛行(Cross country)といって、VORなどを使用して、他の空港へ足をのばす訓練が始まります。今月下旬には、実技試験ですから、1日1日を大事に過ごさないといけません。
Hayward Airport Ruway28R


休日(1981/8/3 Mon)


 今日は休日です。アメリカに滞在するのもあと約3週間です。現在は基礎的な技能訓練の仕上の段階で、確実に訓練をこなしていかないと次のステップである野外飛行へ進めません。本当に1日1日が大切です。
 8月1日のタッチアンドゴーで使用したフリモント空港は本当に小さな空港です。Runwayの長さ2,300feet(約700m)、幅は軽飛行機の離着陸で精一杯ですから50feet(約15m)程度。Taxi wayは穴もあり、ぼこぼこ。Runway endには、たしかガイコツマークも。着陸の緊張しているときに、「ガイコツマークとは縁起でもないなあ」と感じつつ、飛行機を滑走路のセンターラインあわせました。
 左の航空図の赤い印がFremont Airportの位置です。すぐ南がSan Jose Airport、南西にあるのがNas Moffett Airportです。Fremont Airportは紫色に塗ってありますが、これはNon tower(管制塔なし)を示しています。ただ、2004年現在、この空港はなくなっているそうです。思い出の深い空港なので、なんか寂しいです。
今はなきFremont Airport
(赤い矢印の空港)


トレーニング17日目(1981/8/4 Tue 14:00〜15:48)


・訓練機 ⇒Cessna150(N6566G)
・飛行時間⇒1時間48分/累計飛行時間26時間6分
・単独飛行時間⇒0分/累計単独飛行時間54分
・着陸回数⇒5回/累計着陸回数85回
・出発地 ⇒HWD(ヘイワード空港)⇒LVK(リバモア空港)
・到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒タッチンドゴー、失速、低速飛行、不時着訓練、急旋回、8の字旋回









 今日は、いつもの教官とは違う教官です。リバモア空港まで飛んで、タッチアンドゴーを4回、その後、8の字などの旋回訓練を行いました。
 旋回訓練は、地上の目標を設定して、風も考慮して8の字を描くように訓練します。が、うまくできているのかどうかなどわかりませんし、教官の英語でまくしたてられて、自分としてはさっぱりでしたが、Average Gradeは2(1が優)、「ほんとかいな」というのが実感でした。
 外の景色を見る余裕もそれなりにでてきました。7月の訓練記でも紹介しましたが、アメリカの西海岸は秋の雨季以外は雨が降らないので、山肌にはほんと緑がありません。
緑の少ないアメリカ西海岸の山々


トレーニング18日目(1981/8/5 Wed 16:00〜17:24)


・訓練機 ⇒Cessna150(N66592)
・飛行時間⇒1時間24分/累計飛行時間27時間30分
・単独飛行時間⇒0分/累計単独飛行時間54分
・着陸回数⇒8回/累計着陸回数93回
・出発地 ⇒HWD(ヘイワード空港)⇒FMT(フリモント空港)
・到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒短距離離陸、短距離着陸、フードワーク









 今日は、フリモント空港で短距離着陸と短距離離陸の訓練です。フリモント空港は、滑走路が短いので、文字どおり、短距離で勝負です。
 それから、今日は、フードワークといって、つば付きの帽子のようなものをかぶり、計器類しか見えない状態で訓練しました。フードをかぶり、教官が機体をむちゃくちゃな体勢にして、「You have control.」といって操縦かんを私に渡します。私は、まず速度計や人工水平儀を見て機体の体勢を立て直し、昇降計や高度計をみながらパワーを調整します。おっ、意外と冷静にできました。
 西海岸は秋の雨季以外は毎日快晴で、本当に青く美しい空です。
コクピットから見る空


トレーニング19日目(1981/8/6 Thu 17:00〜18:24)


・訓練機 ⇒Cessna150(N66592)
・飛行時間⇒1時間/累計飛行時間28時間30分
・単独飛行時間⇒1時間/累計単独飛行時間1時間54分
・着陸回数⇒5回/累計着陸回数98回
・出発地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒失速、低速飛行、急降下、急旋回









 今日は、3回目の単独飛行です。ヘイワード空港を飛び立ち、Mt.ダイアブロ周辺で、周りに注意しながら、一人で一通りのエアワークをこなしてヘイワード空港へ帰ってきました。
 明日は休みですが、8日からいよいよ、クロスカントリー(野外飛行)が始まります。VORなどの航法計器を使いながら、いろいろな空港へ飛んで帰ってきます。航空図を見ながら飛行経路を考えて、フライトプランも作成しなければなりません。でもなんか、ようやく、A地点からB地点へ行くので、パイロットらしい訓練で、うれしさいっぱいです。
 クロスカントリー(野外飛行)の訓練記は、空港の位置やフライトプランも紹介します。
Hayward Airport Ruway28R


休日(1981/8/7 Fri)


 今日は休日です。しかし、明日からのクロスカントリーに備えて、フライトプランの作成です。左の写真のフライトプランは、当時のアメリカ連邦航空局の様式で、記入項目は飛行タイプ(有視界飛行)、飛行機のタイプ(Cessna150)、出発地、目的地、代替空港、対地速度、出発時間、巡航高度、飛行経路、飛行時間、搭載燃料などを記入します。飛ぶことの楽しさが少しずつわかるような気がしてきました。
 7月の訓練記でも紹介しましたが、私がアメリカに滞在した2ヶ月間で、訓練生4名のうち、2名は免許を取得されないで日本に帰国されました。一人は私と同じ年代の大学生、一人はかなり年配の方でした。それぞれいろいろな理由のようですが、大学生の方は学科試験も合格し、「どうして帰るの、もったいないよ」と感じました。また、年配の方は教官との人間関係で訓練を中止されて帰国されました。
 訓練のやり方で双方の考え方に違いがでて、人間関係を壊してしまったようでした。人間関係って、なかなか難しいんだなと若いなりに考えさせられました。
 さあ、気分を変えて、明日からのクロスカントリー、がんばろう。明日はユニバーシティ空港へ行きます。
Flight Planner


トレーニング20日目(1981/8/8 Sat 14:15〜17:17[目的地にて44分休憩])


・訓練機 ⇒Cessna150(N66592)
・飛行時間⇒2時間18分/累計飛行時間30時間48分
・単独飛行時間⇒0時間/累計単独飛行時間1時間54分
・着陸回数⇒2回/累計着陸回数100回
・出 発 地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・目 的 地 ⇒UNIVERSITY(ユニバーシティ空港)
・最終到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒VORナビゲーション、UNICOMエントリー、フードワーク
・飛行距離⇒往復132statute mile(約213km)
・巡航高度⇒往路3500feet(約1100m):復路4500feet(約1400m)
・対気速度⇒100MPH(約160km)














 今日は、教官と同乗ではじめてのクロスカントリーです。
 ユニバーシティ空港はヘイワード空港から北北東へ位置する空港です。往路の巡航高度は、3500フィート、復路は4500フィートです。VFRの巡航高度ですが、東行きは[奇数×1000+500フィート]、西行きは[偶数×1000+500フィート]です。

 飛行経路の番号説明
  1 Hayward Airport(1→2までの距離23mile)
  2 Buchanan Airport(2→3までの距離22mile)
  3 Travis AFB(3→4までの距離21mile)
  4 University Airport(4→1までの距離66mile)

 まず、往路は1のヘイワード空港を飛び立ち、2のブキャナン空港、3のトレビス空軍基地の上空を通過して、4のユニバーシティ空港へ飛行します。復路はその反対で、飛行経路は点線で示しています。

 ブキャナン空港の3000フィート以上上空を飛びますので、管制塔との交信は必要ありません。
 トレビス空軍基地の上空は飛行禁止区域(月曜日から金曜日まで、時間、高度の制限あり)ですが、今日は土曜日ですので管制塔の許可を得なくとも上空を通過できます。(実際に飛ぶ場合は、最新の航空図で確認が必要です)輸送機ギャラクシーの駐機がよく見えますね。
 ヘイワード空港への帰る際、またフードワークをしました。計器飛行証明も取りたいですが、経費がかかりますね。ちょっとむずかしいかな。
飛行経路
 
Travis Airport


トレーニング21日目(1981/8/9 Sun 12:00〜15:18[目的地にて24分休憩])


・訓練機 ⇒Cessna150(N6566G)
・飛行時間⇒2時間54分/累計飛行時間33時間42分
・単独飛行時間⇒0時間/累計単独飛行時間1時間54分
・着陸回数⇒3回/累計着陸回数103回
・出 発 地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・目 的 地 ⇒SNS(サリナス空港)
・最終到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒VORナビゲーション
・飛行距離⇒往復172statute mile(約277km)
・巡航高度⇒往路3500feet(約1100m):復路4500feet(約1400m)
・対気速度⇒100MPH(約160km)














 今日も教官と同乗です。昨日はヘイワード空港から北へ飛びましたが、今日は南へ飛行します。

 飛行経路の番号説明
  1 Hayward Airport(1→2までの距離70mile)
  2 Hollister Airport(2→3までの距離20mile)
  3 Salinas Airport(3→1までの距離82mile)

 往路は、ホリスター空港を経由してサリナス空港へ向かいます。巡航高度は3500フィート、ヘイワード空港を離陸後、右手にサンノゼ空港を見ながら、ホリスター空港を目指して一路南東方向へ飛行して着陸し、それからサリナス空港を目指します。
 復路は、サリナス空港からヘイワード空港へ直接、帰還します。巡航高度は4500フィートです。
 気象情報によると、往路は追い風、復路は向かい風のようですので、往路の対地速度は110mile、復路は90mileぐらいです。
 サリナス空港からヘイワード空港へ帰還するときに、教官がいきなり、「急遽、着陸する必要がでてきたので、代替空港を検討せよ。」と指示。航空図を見ながら、距離などを測って代替空港を検討しました。訓練の一環ですね。
 サンフランシスコは地震が多いところで断層があるのですが、断層沿いに飛行すると、左の写真のように湖が断層に沿って点在しているのがよくわかります。
 明日からは、単独でクロスカントリーに行きます。また、翌々日の11日にサリナス空港へ飛行しますが、大変な状況を経験しました。詳しくは8月11日の訓練記で。
飛行経路
 
断層に沿って湖が点在


トレーニング22日目(1981/8/10 Mon 13:00〜15:42[目的地にて24分休憩])


・訓練機 ⇒Cessna150(N6566G)
・飛行時間⇒2時間18分/累計飛行時間36時間
・単独飛行時間⇒2時間18分/累計単独飛行時間4時間12分
・着陸回数⇒2回/累計着陸回数105回
・出 発 地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・目 的 地 ⇒UNIVERSITY(ユニバーシティ空港)
・最終到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒VORナビゲーション
・飛行距離⇒往復147statute mile(約237km)
・巡航高度⇒3500feet(約1100m)〜5500feet(約1700m)
・対気速度⇒100MPH(約160km)














 今日は、初めてのソロクロスカントリーです。8月8日に飛行したユニバシテー空港まで飛びます。飛行中はトレーニングはせず、航法計器のVORを使いながら、ひたすら目的地へ飛んで帰還します。ひとりだとなんかうれしいですね。

 飛行経路の番号説明
  1 Hayward Airport(1→2までの距離43mile)
  2 Travis AFB(2→3までの距離20mile)
  3 University Airport(3→4までの距離36mile)
  4 大きな湖(4→1までの距離48mile)

 往路は、トレビス空軍基地の上空を通過してユニバーシテー空港へ向かいます。巡航高度は磁方位が東向きの場合は5500フィート、西向きの場合は3500フィートです。
 復路は、ユニバーシテー空港から南方向へ飛んで、大きな湖の上でブキャナン空港に向かい、その空港上空で針路を南にとりヘイワード空港へ帰還します。巡航高度は5500フィートから4500フィートへ、そして3500フィートへ降下します。
 今回飛んだ地域は、だだっ広い耕作地が広がります。アメリカ大陸のなんという広さ(大して飛んでないのですが)、なんという空港の多さ、高速道路などなんという充実した基盤整備、飛びながらいろいろなことを学んだ気がします。
 明日も単独でサリナス空港へ向かいます。この時点では、まさかあんなことを体験するとは夢にも思っていませんでした。
飛行経路
 
だだっ広い耕作地


トレーニング23日目(1981/8/11 Tue 14:48〜18:06[目的地にて36分休憩])


・訓練機 ⇒Cessna150(N66592)
・飛行時間⇒2時間42分/累計飛行時間38時間42分
・単独飛行時間⇒2時間42分/累計単独飛行時間6時間54分
・着陸回数⇒5回/累計着陸回数110回
・出 発 地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・目 的 地 ⇒SNS(サリナス空港)
・最終到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒VORナビゲーション
・飛行距離⇒往復172statute mile(約277km)
・巡航高度⇒3500feet(約1100m)〜4500feet(約1400m)
・対気速度⇒100MPH(約160km)














 本当に死ぬかと思いました。このような経験は、2004年現在、振りかえってみても経験したことがありません。「ああ、ここで死んでしまうんだ。」と心底思いました。
 ちょっと過激な書き出しですが、今日のフライトは8月9日の飛行経路と同様です。ヘイワード空港から南下し、ホリスター空港で一旦着陸し、再度、離陸してサリナス空港へ着陸し、休憩。そして、ヘイワード空港へ帰還します。

 飛行経路の番号説明
  1 Hayward Airport(1→2までの距離70mile)
  2 Hollister Airport(2→3までの距離20mile)
  3 Salinas Airport(3→1までの距離82mile:実際は2へ向かい、途中から1へ針路をとる)

 順調に飛行していましたが、ことは3のサリナス空港離陸後におこりました。ヘイワード空港へ帰還する点線の予定飛行経路にかなり一面、雲がでてきたため、進路を東にとり山を越えることにしました。雲の下を飛んでいたところ、なんと、その雲の雲低が低く、飛び越える山をすっぽり隠してしまいました。山の高さはわかっているので、雲中へ入り高度を上げるということもできますが、私は有視界飛行が前提ですし、教官に「絶対、雲に入るな」といわれており、いろいろと考えているうちに山が近づいてきました。
 今から考えると、Uターンしてひき返したほうがよかったかもしれませんが、なにせ山肌が見えてましたし、木々の1本1本も間近に見えたのでそんな余裕はありませんでした。私は「これでわが人生も終わりだ」と思いながら、しばらく山の谷を、右へ左へ飛んでいました。このまま山にぶつかってしまうのか、どの時点の判断がまずかったのだろうなどと考えながら必死に飛びつづけました。

 山肌がますます近くなり、「もう、これ以上、飛びつづけるのは限界だ」と思った瞬間、突然、視界が広がりました。雲も切れ、すぐ上昇です。かなり高度が低くなっています。しばらく、興奮状態でしたが、「やった、生きてる!」と感じ、危険回避したことを認識しました。
 眼下には、先ほどもがき苦しんだ雲が見えます。「ああー、よかった、本当に生きてる」と感じ、カメラのシャッターを切りました。後にも先にもこのような思いをすることは2度とないだろうと思っています。
飛行経路
 
死ぬ思いをさせられた雲


トレーニング24日目(1981/8/12 Wed 12:00〜14:36[目的地にて30分休憩])


・訓練機 ⇒Cessna150(N6566G)
・飛行時間⇒2時間6分/累計飛行時間40時間48分
・単独飛行時間⇒2時間6分/累計単独飛行時間9時間
・着陸回数⇒2回/累計着陸回数112回
・出 発 地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・目 的 地 ⇒MOD(モデスト空港)
・最終到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒VORナビゲーション
・飛行距離⇒往復132statute mile(約213km)
・巡航高度⇒3500feet(約1100m)〜4500feet(約1400m)
・対気速度⇒100MPH(約160km)














 昨日は、雲の恐ろしさ、一瞬の判断の大切さを経験しました。気を取り直して、今日は一路、東方向のモデスト空港へ飛びます。
 今日のフライトは、ヘイワード空港から東へ飛んでリバモア空港上空を通過して、モデスト空港に向かいます。モデスト空港でちょっと休憩して、ヘイワード空港へ帰還します。

 飛行経路の番号説明
  1 Hayward Airport(1→2までの距離17mile)
  2 Livermore Airport(2→3までの距離49mile)
  3 Modesto Airport(3→1までの距離66mile)

 霧のサンフランシスコとよくいわれますが、サンフランシスコ東にあるサンフランシスコ湾のさらに東方面は、雲や霧はあまり出ません。(雨季である11月頃はそうでもないようです。)毎日が日本晴れならぬ、アメリカ晴れといえる快晴状態です。2ヶ月の滞在中、天候によりフライト不可という日は1日もありませんでした。しかし、昨日のサリナス空港のように少し、海よりのあたりはそうでもないようです。

 左の写真でもわかりますが、とにかく、本当に広い大陸です。西海岸だけを飛んでこのように思うわけですから、北アメリカ大陸は本当にでかいですね。ただ、飛行禁止区域がありますから、航空図を見ながら、それなりに飛ぶ必要がありますね。そうしないと戦闘機がスクランブル発進しますから。
飛行経路
 
やっぱ、広い!


トレーニング25日目(1981/8/13 Thu 13:00〜15:36[目的地にて30分休憩])


・訓練機 ⇒Cessna150(N6566G)
・飛行時間⇒2時間6分/累計飛行時間42時間54分
・単独飛行時間⇒2時間6分/累計単独飛行時間11時間6分
・着陸回数⇒2回/累計着陸回数114回
・出 発 地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・目 的 地 ⇒Santarosa Aircenter(サンタロサ・エアセンター空港)
・最終到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒VORナビゲーション
・飛行距離⇒往復165statute mile(約266km)
・巡航高度⇒3500feet(約1100m)〜4500feet(約1400m)
・対気速度⇒100MPH(約160km)














 今日は、北西方向にあるサンタロサ・エアセンター空港へ飛行します。単独のクロスカントリーも4フライト目です。
 今日のフライトは、ヘイワード空港からサンフランシスコ湾をNapa VORを目指して北上し、日本航空の訓練所のあるナパ空港(2の右上にあります)の横を通過して、サンタロサ・エアセンター空港へ向かいます。復路は、ナパ空港周辺上空で寄り道をしてヘイワード空港へ帰還します。

 飛行経路の番号説明
  1 Hayward Airport(1→2までの距離40mile)
  2 Abeam NAPA Airport(2→3までの距離27mile)
  3 Santarosa Aircenter Airport(3→1までの距離98mile:復路は、2の右上に位置するナパ空港を通過したため、往路と距離が違います)

 クロスカントリーも慣れたせいでしょうか、鏡に写る自分の姿をパチリ。
 計器を見ると、現在、午後1時35分、高度約4500フィート、エンジン回転数2400RPMのようです。VOR計器も針が少しずれていますがほぼ、オンコース。

 さあ、明日は、久しぶりの休日です。思えば、クロスカントリーづけの一週間でしたが、本当に充実していました。休日後は、夜間飛行、そしてメインイベント(?)のロングクロスカントリーです。本当に、充実した日々が続きます。
飛行経路
 
クロスカントリー飛行中の私


休日(1981/8/14 Fri)


 今日は休日です。アメリカに滞在するのもあと約2週間です。
 次節の訓練は、いよいよ夜間飛行、ロングクロスカントリー(かなりの距離を飛びます)で、訓練も終盤です。本当に毎日が充実しています。
 さて、クロスカントリーの経路はフライトプランを見ながら書いています。左の写真は実際に使用した原本です。一番左の項目は出発地からはじまり、チェックポイント、目的地を書いています。そして、右の欄に、実際の飛行時間、使用するVOR基地、各チェックポイント間の距離、時間、使用燃料、対地速度、対気速度、高度、エンジン回転数、へディング、偏差、風などを記入しています。
 このフライトプランは、ユニバーシティ空港への往路のもので、チェックポイントは、HWD、Abeam Lake Chabot、Over Buchanan、Over CCR-VOR、Before Alart Area、Report Point(Travis)、Over Travis Report Point(Travis)、University Airportとなっています。
ユニバーシティ空港までのフライトプラン


トレーニング26日目(1981/8/15 Sat 21:35〜01:39[途中の空港で計22分休憩])


・訓練機 ⇒Cessna150(N704TH)
・飛行時間⇒3時間42分/累計飛行時間46時間36分
・単独飛行時間⇒0時間/累計単独飛行時間11時間6分
・着陸回数⇒10回/累計着陸回数124回
・出 発 地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・目 的 地 ⇒LVK(リバモア空港)⇒TRACY(トレーシー空港)⇒MCD(マーセド空港)
  ⇒MOD(モデスト空港)⇒LVK(リバモア空港)
・最終到着地 ⇒HWD(ヘイワード空港)
・訓練内容⇒夜間飛行、VORナビゲーション、タッチアンドゴー
・飛行距離⇒往復206statute mile(約332km)
・巡航高度⇒3500feet(約1100m)〜4500feet(約1400m)
・対気速度⇒100MPH(約160km)














 今日は、教官と同乗して、はじめての夜間飛行です。ワクワクです。途中、5か所の空港を経由してヘイワード空港へ戻ってきます。一緒に訓練を受けている大学の先輩と一緒に、2機編隊による夜間の飛行訓練です。機体はCessna150ですが、初めて乗る機体(N704TH)です。
 飛行経路は、ヘイワード空港離陸後、東に向かいリバモア空港でタッチアンドゴーをして、トレーシー空港へ向かいます。トレーシー空港でもタッチアンドゴーをして、続いてマーセド空港、モデスト空港でもタッチアンドゴーをします。モデスト空港離陸後、リバモア空港へ戻り、タッチアンドゴー(4回)を行い、ヘイワード空港へ帰還します。
 飛行経路の番号説明
  1 Hayward Airport(1→2までの距離17mile)
  2 Livermore Airport(2→3までの距離21mile)
  3 Tracy Airport(3→4までの距離58mile)
  4 Merced Airport(4→5までの距離34mile)
  5 Modesto Airport(5→6までの距離59mile)
  6 Livermore Airport(6→1までの距離17mile)
 西海岸の夏は日が長く、夜9時ごろにならないと暗くなりません。このため、夜の9時35分に離陸し、ヘイワード空港へ帰還したのはなんと、日が変わった翌日16日の午前1時39分でした。
 ヘイワード空港を離陸すると、左手前方にサンフランシスコの夜景が見えます。エアラインからの夜景もきれいですが、軽飛行機の窓越しに見える夜景は、まるでサンフランシスコの夜景をひとり占めした感じでなんと表現したらいいかわからないくらいきれいでした。
 また、着陸した空港のうち、トレーシー空港のみ管制塔のない空港なんですが、夜は真っ暗な滑走路です。が、PCL(Pilot Controlled Lighting)という設備があり、トレーシー空港の周波数にあわせてプレストークボタン(話す時に押すボタン)を5秒以内に5回押すと、なんと滑走路のライトが滑走路の端から、ババババババッとつくんです。まるで、巨大なクリスマスツリーを点灯するようで本当にきれいです。このような設備が整っているアメリカは本当にすごいなあと感じました。
 ただ、夜間飛行ではちょっと失敗してしまいました。Cessna150の場合、接地後の着陸滑走距離は約500フィート(約150m)なんですが、滑走路がよくわからず、マーセド空港で5900フィートの滑走路を全部使ってしまい、教官から笑われてしまいました。
 さあ、次のフライトは、16日、いよいよロングクロスカントリーです。興奮覚めやらぬ夜間飛行ですが、ヘイワード空港へ帰還したのが16日の午前2時前、早く帰って寝ましょう。
飛行経路
 
ヘイワード空港もやっと夜
さあ、夜間飛行だ!


 [上へ戻る] [Back] [Site Menu] [Top Page]